どんな取り組みか
「Living Mart — AI エージェントが経営するお店」は、6体のAIエージェントがリアルタイムで店舗経営を行うデモです。これまでのAIが人間の指示を実行するだけでなく、AI自身が意思決定し、継続的に実行し続けるという新しいアプローチを「お店の経営」という題材で実現しています。人間はビジネスの枠組み(ルール)のみを提供し、その範囲内でAIが自律的に意思決定し、行動します。これは、ソフトウェア開発におけるコーディングエージェントを「ハーネス(安全装置)」で囲むことで信頼性を高める考え方を、ビジネス運営に応用したものです。
使われた技術スタック
AIエージェントの思考には、Amazon Bedrock上のClaudeが利用されています。ステッカーのデザイン生成には、Amazon Bedrockの画像生成モデルが使用されました。店舗経営の基盤となるシステムは、AWSのマネージドサービスを組み合わせて構築されています。
- 常駐エージェント: 各エージェントはAWS Step FunctionsとAmazon ECS(AWS Fargate)で構成され、約10秒ごとに自身を再起動するループとして動作します。
- 記憶: Amazon S3をファイルシステムとしてマウントすることで、エージェントの役割定義、学習内容、スキルといった記憶をファイルとして永続化し、セッションをまたいで経験を蓄積します。
- ハーネス: 注文、在庫、会計を扱うERPのAPI(Amazon API Gateway + AWS Lambda)とAmazon Aurora Serverless v2(PostgreSQL)を制約として利用し、「在庫はマイナスにできない」「原価割れの価格は受け付けない」といったビジネスルールをシステム側で強制します。
実装のポイント
Living Martの最大の特徴は、AIをプロンプト(指示)ではなく、構造(仕組み)で制約している点です。「赤字で売らないで」といったプロンプトはAIが忘れてしまう可能性がありますが、ERPシステムに原価割れ価格を受け付けないルールを組み込むことで、システム側が強制的にビジネスルールを維持します。これは「ハーネスエンジニアリング」の考え方をビジネスの世界に持ち込んだものです。
また、AI研究における「The Bitter Lesson(苦い教訓)」に従い、人間が手作りした知識よりも、計算(スケール)に賭けた汎用的な手法が最終的に優位になるという考え方に基づいています。そのため、巧妙なプロンプトや細かく作り込んだ手続きには意図的に労力をかけず、代わりにモデルが賢くなるほど効果を発揮する「壊れない箱」(高可用で自己回復するインフラ、AIが破れないビジネスルール、エージェントに合ったシンプルなツール群)を用意することに注力しました。箱の中でAIが何を考え、どう動くかは、Claudeに委ねられています。役割分担すら固定せず、エージェント同士の合意で決定されます。
得られた成果や学び
Living Martでは、6体のAIエージェント(CEO、オペレーション、PR、コンシェルジュ、サイネージ、ベンダー)が、商品の仕入れから値付け、サイト運営、接客、広告まで、すべてを自律的に話し合い、決定し、実行し続けます。さらに、商品を納入するベンダーは別会社(別テナント)として動作させ、企業をまたいだ取引まで再現しています。
来場者は、スマートフォンからリアルタイムで動いているECサイトで買い物を体験できます。AIエージェントが企画・撮影・値付けした商品が並ぶ商品一覧ページや、AIが在庫・売上を見て自律的にコンテンツを切り替える会場モニターのサイネージなどを確認できます。商品を購入し、抽選に当選すると、AIがデザインしたオリジナルステッカーがその場で印刷されてプレゼントされます。
デモブースでは、6体のエージェントの稼働状況をリアルタイムで監視できるダッシュボードや、エージェント同士がチャットで連携する様子(#generalチャンネル)も確認でき、AIによる店舗経営のリアルタイムな動きを覗くことができます。
まとめ
「Living Mart」は、AIが自律的に意思決定し、継続的にビジネスを運営する未来の一端を示すデモです。AWSのマネージドサービスを活用し、AIの「壊れない箱」を用意することで、人間が介入せずとも店舗経営が成り立つ可能性を示唆しています。AWS Summit JapanのAWS Builders’ Fairで展示され、来場者は実際にAIが経営するお店で買い物を体験することができました。
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この記事に関連する技術領域の認定資格
AWS 関連資格
- AWS Certified Cloud Practitioner
- AWS Certified Solutions Architect – Associate
- AWS Certified Developer – Associate
- AWS Certified Solutions Architect – Professional
- AWS Certified DevOps Engineer – Professional
- AWS Certified Machine Learning – Specialty
※ 認定資格は技術スキルの体系的な学習に役立ちます。試験の出題範囲や受験要件は変更される場合があるため、受験前に必ず公式サイトで最新情報をご確認ください。
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